技術情報・取扱説明書
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技術情報 厚労省通達「基発0710」(2009/7/10)振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針の概要
1,周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値とは?
JIS B 7761(ISO5349)に準拠した測定器を使用し、JIS B 7761-2、JIS B 7762-5、ISO19432に基づく測定方法で、直交3軸(X軸,Y軸,Z軸)の振動加速度実効値を同時に測定し、下記計算式で求めた数値が3軸合成値です。
3軸の各々の振動加速度実効値をahwx,ahwy,ahwzとすると、3軸合成値ahvは下記で求められます。
2,誰が測りますか?
機械の周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値は、私たちメーカーが測ります。
三笠産業では下記規格に基づいた振動値を記載しております。
製品識別マーク | 製品名 | 準拠規格 | |
計測機器 | 測定方法 | ||
● |
バイブレーター類 | JIS B 7761-1 | JIS B 7761-2 |
★ |
タンピングランマー | JIS B 7761-1 | JIS A 8508-4:2006 道路工事機械-安全-第4部:締固め機械の要求事項に基づく |
▲ |
手持式 E/Gカッター | JIS B 7761-1(ISO5349) | ISO 19432 |
■ |
ブレーカー、チッパー | JIS B 7761-1 | JIS B 7762-5 |
タンピングランマー、プレートコンパクター、ハンドガイドローラー等の搭乗式でない転圧機には特に指定がありませんが、コンクリートバイブレーター同様に、JIS B 7761に準拠した測定機器を使用し手腕振動値の測定を進めています。
3,3軸合成値はどこに表示されているの?
三笠の海外EU向け製品取扱説明書には3軸合成振動加速度実効値を表示しております。
日本国内におきましては一部機種の振動値を、労働基準監督署の要求で提出していますが、お客様の便宜をはかりホームページ上にも随時表示を進めています。
4,具体的な作業者の振動管理方法は?
1日8時間の作業時間中に、手腕がどの程度振動に曝されたかを表す数値(等価振動加速度実効値)が日振動曝露量A(8)(m/s2)になります。そしてA(8)= 2.5(m/s2)を日振動曝露対策値、A(8)= 5.0(m/s2)を日振動曝露限界値と言います。
基発0710では、使用する工具の『周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値』をメーカーのホームページ等で把握し、A(8)が日振動曝露限界値(5.0m/s2)を超える事の無い様に、振動曝露時間(工具使用時間)の抑制,低振動工具の選定等を定めています。
基発0710第2号3-(4)項では、事業者(施工者、現場監督等)に対して、メーカーが公表した『周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値』に基づき、使用する工具の日振動曝露量A(8)を事業者自身が計算し、日振動曝露限界値(5.0m/s2)を超えない様に、振動工具を用いる具体的な作業計画を作成し、書面等で作業者(労働者)に示さなければなりません。
振動工具の日振動曝露量A(8)(m/s2)は、下記計算式で求められます。1)終日 同一の工具を使用する場合
メーカーの発表した振動加速度実効値の3軸合成値をahv(m/s2),工具の使用時間をTv(時間)とすると
A(8)=ahv×√(T/8)(m/s2)となります。
2)振動の異なる複数の種類の工具を使用する場合
1番目の工具のメーカー表示3軸合成値をa1(m/s2)使用時間をT1,2番目の工具のメーカー表示3軸合成値をa2(m/s2)使用時間をT2,同様にn番目の工具のメーカー表示3軸合成値をan(m/s2),使用時間を Tnとすると
①振動工具を使用した合計時間 Tv(時間)は
Tv=T1+T2+・・・+Tn
②使用した振動工具の合計振動3軸合成値ahv(m/s2)は
a hv=√((a12×T1+a22×T2+・・・+an2×Tn)/Tv)
となり、複数の工具を使用した場合の日振動曝露量は下記で求められます。
A(8)=ahv×√(Tv/8)
計算例
周波数補正振動加速度 実効値の3軸合成値 |
振動曝露時間 (工具使用時間) |
個々の工具の 日振動曝露量 |
||
振動工具No | a(m/sec2) | 時間 | 分 | A(8)(m/s2) |
振動工具1 | 3.3 | 1 | 0 | 1.17 |
振動工具2 | 4.7 | 30 | 1.18 | |
振動工具3 | 2.7 | 30 | 0.68 | |
振動工具4 | 0.00 | |||
振動工具5 | 0.00 | |||
合計 工具使用時間 Tv | 2.00 | (h) | ||
日振動合計曝露量 A(8) | 1.79 | (m/sec2) |
この合計が日振動曝露限界値5.0m/s2を超えない場合でも、日振動曝露対策値2.5m/s2を超える場合には、振動曝露時間(作業時間)の抑制、低振動の振動工具の選定等の対策に努めることが事業者に義務付けられます。
こちらのページに日振動曝露量A(8)の簡易計算フォームをご用意いたしましたのでご参照ください。
5.工具使用可能時間の計算
基発0710第2号 別紙3-(2)ウ項に、日振動曝露限界時間5.0(m/s2)に対応した1日の工具使用可能時間(振動曝露限界時間)の求め方が示されています。
工具の周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値をahvとすると、振動曝露限界時間TLは
TL=200/ahv2(時間)
基発0710第2号 別紙3-(2)ウでは、計算結果に対し実際の振動曝露時間を以下とするように、定めています。
当面、1日の振動曝露時間を2時間以下とすること。
(基発0710第2号 別紙3-(2)ウの但し書きに該当する場合でも、1日の振動曝露時間を4時間以下)
1日の振動曝露時間を、計算結果の範囲内に制限してください。
《参考》日振動曝露量A(8)と対策について(基発0710第2号3-(2)項より)
① A(8)が2.5m/s2以下
基発0710では、特に対策は定めていませんが、基発0710第2号 別紙3-(2)ウに基づき、振動曝露時間(作業時間)を当面2時間以内としてください。
② A(8)が2.5m/s2を超えて5.0m/s2以下
基発0710では、より低振動の工具を選定する、或いは振動曝露時間を見直す等の対策に努めるように定められています。振動曝露時間は当面2時間以内としてください。
③ A(8)が5.0m/s2を超えた場合
日振動曝露限界値5.0m/s2を超えないように、振動曝露時間の抑制、低振動の工具の選定が定められています。振動曝露限界時間は、5項の振動曝露限界時間TLの計算式から求められます。
計算の結果TLが2時間以上のとき:振動曝露時間は当面2時間以内としてください。
計算の結果TLが2時間未満のとき:振動曝露時間を、計算結果の範囲内に制限してください。
※更に詳しい内容を知りたい方は、下記の安全衛生情報センターの該当ページにアクセスしてください。
①基発0710第2号
チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針について
②第2号(別紙1)
チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針対象工具
③第2号(別紙)
チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針
※三笠製品周波数補正振動加速度実効値
表中の◎印は2.5m/s2未満です。
●高周波バイブレーター
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●マイコンバイブレーター
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●軽便バイブレーター
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●電直バイブレーター
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●錐振バイブレーター
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★タンピングランマー
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★タンピングランマー
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▲エンジンハンドカッター
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■ブレーカー、チッパー
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※作業時間,日振動曝露量の計算例
FX-60Eを使用した場合(3軸合成値 4.9m/s2) 振動曝露限界時間TLを求めます。
TL = 200/(4.9)2 → 200/24.01 → 8.3時間
2時間を越えていますので、基発0710第2号 別紙3-(2)ウに従い 作業時間を最大2時間とします。
↓
この時の日振動曝露量を求めます。
A(8)=4.9×√2/8 → 4.9×0.5 → 2.45m/s2
日振動曝露量2.5m/s2未満となり、基発0710では特に振動対策は求められておりません。
但し振動への耐性には個人差があるので、振動対策は怠らないでください。
こちらのページに日振動曝露量の簡易計算フォームをご用意いたしましたのでご参照ください。